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がんを克服・生還された
元患者さんの体験記です。

“がんになってよかった”エイちゃん(講演会内容を要約)

織田英嗣さん

がんになってから、今までの経緯

僕は7年前に食道がんになりました。しかし、たぶんここにみえる方でがんになってよかったと言える方はまずいないと思うのです。僕も同じころ、ちょうど6年前、皆さん方の席にいました。いちばん最初に出会った患者会がこのいずみの会。そして、名古屋に患者会があるということで、どんな会なのだろう。本で読んだのですが、そこには元気な人がたくさんいる。真っ暗やみのどん底にいました。そんなときに、今日素晴らしいチェロの演奏がありましたが、きらきら光る星たちに出会えたのです。中山武会長という一番星が、会場の演台に立って「皆さん、おはようございます」というすごく元気な声で、きらきらきらきら光っていたのです。

僕がそのとき思っていたことは、ああ、ああいうふうになりたいな、あんなふうになるためには、どうしたらいいのだろう、こんなふうに考えました。そこから、いろんな方の応援をいただき、いろんな先輩方に教えていただき、そして、がんになったことに対して僕は一つの決断をしました。がんになってよかったと思えるようになろう。当時はがんになってよかったと思えるはずもない、真っ暗やみですから。しかし、がんになってよかったと思える選択をしていこうという、その決意を一つしたのです。

そして、その選択を一つずつ一つずつできることからやっていったことによって、だんだん、がんになってもそんな悪いことばかりでもないかな、そして、がんになって何かいいこともたまにはあるじゃん、から、だんだんだんだんがんになってああよかったなと思えるようになってきた。その過程なのです。

だから、誰でもがんになってよかったなんて最初から思えるはずはありません。しかし、その決意をして、自分の選択を変えることはできると思うのです。そこからスタート。そして、もう一つ、こうやってきらきら光る人たちを見ながら、私も必ずああいうふうになれるんだという、自分のやっていくことを信じる力、これが病気になったときにたぶんすごく大切で、その光を見ていく、一番星。星って暗いときしか見えないのですね。日中は見えないのです。真っ暗になったときに見えるものが星なのです。そういう星に僕は願いを込めて、今日は6年たって、こうやってそのときのいずみの会のこういうところに呼んでいただき、ちょっとまだ一番星とまではいかないかもしれないのですが、皆さんにこうやって自分の経験をお話しさせていただくという場をご提供いただいたこと、いずみの会の皆様に心よりお礼を申し上げます。

私はどんな人間か皆さんは知らないかと思いますので、簡単な自己紹介をさせていただきたいと思います。

僕は、7年前に食道がんを宣告され、そのがんは進行がんということで、けっこう大きかったのです。最初に抗がん剤をして小さくしなければ切れないといわれて、約3クール、3日間抗がん剤をしました。そのときは食道がんの抗がん剤はずっと入院して、点滴を入れ続けるのです。それでへろへりになった。いままで健康であると思っていたのが、急に健康診断でわかって、へろへろになって、抗がん剤をやった後、やはり体力的にもう手術をするだけの体力がない。約10時間ぐらいの大きな手術だと言われていたのです。首、わき、お腹を切って、胃の3分の1を切って筒状に丸めてつなげるという大きな手術をしました。

その翌日は人工呼吸器につながれて、今までできていたことがもうまったく何もできない状態になりました。呼吸器につながれているのは、呼吸の管理ができないから、意識のあるまま人工呼吸器に2日間ぐらいつながれていました。首も固定されてしまっているので天井しか見えない。首を動かすこともできない。人工呼吸器が入っていますから、もちろん話すこともできない。僕はうつで、睡眠薬がないと眠れなかったのですが、人工呼吸器が後ろでヒューヒューいっているので全然眠れない。そういう眠れない苦しみ、そしてもちろん飲食もできないというような状態にありました。ですから、これから自分がどうなるのか、そして誰とも話せないという孤独、そしてこんなふうになってしまった無力感等がありました。

しかし、僕はいま思うと、この状態があったからこそ今があるのではないのかなと。絶対もうここには戻りたくない。そして、ここからおれは元気になってやるんだというふうに思うきっかけにこれがあったと思うのです。人間というのはどんなことが起こっても、その状態からどっちへ向うかということでたぶん大きく変われるのではないのかなと僕自身は思います。

その後、こんなことがわかりました。食道がんってどういうがんなのということをいろいろ調べました。そうすると、食道がん全体の生存率は1970年は4%であったが、現在では14%ほどに改善されている。再発した場合はおよそ半年の余命で、1年以上生きられることもあるが、早ければ3ヵ月以内のこともあり……と書いてあるのです。

子供がそのころまだ小学校3年生と1年生でした。これからどうするのと。再発といわれたら3ヵ月先、どうなるのと。そんなふうに思って、本当の恐怖というのはそこでした。真っ暗やみの中どん底にいて、さあどうしようか、これから自分の先はどうなるのか。そんなふうに思っていました。

そんなときにそこにあったのはやはり絶望です。いったんは僕は絶望のどん底に落ちました。でも、それから、7年後、その影をたぶん見ることもできないぐらい元気になっているのではないのかなと思います。

そこで僕が今感じることは、絶望と希望というのは対立はしていない、対極にあるのではないということなのです。その感じる程度の差であって、絶望というのは、僕は望みを自分で絶ってしまったから絶望感になる。しかし、絶望のなかに希な望みを自分で見い出す。それが先ほどの一番星、きらきら光る星におれはなるんだ、なりたいんだ。そんな思い出僕は絶望のなかに小さな希望を見つけました。

そこからは、絶望を消すことはできない、しかし、小さな希望を大きくしていくことによって、大きな絶望のなかに少しずつ少しずつ希望を増やしていくことはでき、絶望と希望の構成比が、だんだん希望が大きくなってくることによって、人間は不思議なもので、希望というものを見ることができる。そんなように僕は思うのです。だから、決して自分で望みを絶たない。こういう患者会があると、いろんな希望がたくさんあちらこちらにあるはずなのです。その希望を信じて自分で行動することがすごく大事かなと思います。

僕ががんになったとき、なる前は絶頂期でした。三越という会社にいて、同期の誰よりも一番出世をして順風満帆、出世コースに乗って管理職になってというのがあったのですが、やはりいろんなストレスが出てきて、そこから生活習慣病、そしてアルコール依存、うつというふうに坂を転げ落ちるように落ちていって、そしてがん、手術という結果になりました。そこにあったのは絶望です。

しかし、僕はがんになって、ここまでやってきたがんになった生き方を変えようとして、仕事も辞めて、生き方を百八十度変えてきました。その結果、がんになってよかったなというふうに思えるようになったわけです。これは結果です。

しかし、ほとんどの人はがんになって、やはり最悪の出来事だと思っている。しかし、なかには、僕とか、今日パンフレットを配りました「がん治っちゃったよ!全員集合!」というイベントをやりますが、ここにいる人たちはよかったと言っている人たちが多いのです。だから、それは一つの現象でしかなくて、自分がそれをどうとらえるのか。絶望ととらえるのか、そこから新しい自分の人生を築くのかというところに大きな分かれ目があるのではないのかなと思います。

ピンチはチャンス。そのピンチをどうするか。それで皆さんの人生、新しい人生が始まるのかもしれない。そういう人生の選択が一つ増えたのだと思ってみること。それが僕はすごく大事じゃないかと思います。

僕はその後いずみの会と出会い、先ほどもご紹介のあったガンの患者学研究所、いのちの田圃の会というところと出会った。がんになって2年目でした。2年目からそんなことをやりだしました。がんになって4年目ぐらいに、会長として全国縦断キャラバンということで、「がんは治る」と描いたキャラバンカーに乗って、沖縄から北上して、全国の会員さんと一緒に街頭演説をしながら全国を回ったりして、本当に多くの全国の患者さんと接して、私自身がそういった方にいろんなことを教えていただきながら、人生経験を踏みながら今こうやって皆さんの前でお話しできるようになりました。

僕はどうやって元気になったか

今日はちょっと僕がどうしてこうやって元気になれたのか。がんという病気に対してどんな取り組みをしてきたか、どういうふうに考えたのかということを、皆さんにお話しさせていただきたいと思います。

がんと免疫力

まずがんと免疫の関係というのは皆さんもよくご存じだと思います。がん細胞は毎日1000~3000個人間の体にできています。しかし、がんにならない人もなる人もいる。そして、がん細胞ができてがん細胞が無限に増殖をするという定義どおりなら、必ず全員がんで死ぬはずです。しかし、がんになる人、ならない人がいるというのは、人間のなかに備わった免疫力という力が非常に大きな役割を果たしているということです。

免疫力がだんだん下がってくると、がん細胞というのは増殖します。そして、免疫力が通常より下がった状態になることによってがんの増殖力がどんどんアップして、約1センチで100億個といわれていますが、100億個になったときに、1センチのがんが見つかりましたよ、あなたがんになっていますよと言われるわけです。

そして、がんとわかると、不安、恐怖、そして、僕もやりました放射線、抗がん剤、手術と過酷な治療が待っています。その過酷な治療によって、免疫力が上がることはないですよね。そうすると免疫は急激に下がります。するとがん細胞は大幅に増殖する。

医者ががんは速く増殖する、すぐ切らなきゃと言うのは、自分たちががんを見つけて過酷な条件に患者さんを置くことによってがんが増殖する環境をつくっているのではないのか。医者、先生と呼ばれる権威のある人にそうやって言われればどうしてもそうなってしまう。だけど、自分がどうするかということを自分で考えていくことがとても大事なのではないかと思います。

なぜがんになるのか

ではどうしてがんになるのだろう。僕は、がんになる大きな原因が三つ、四つあると思っています。まずはライフスタイル。皆さんのライフスタイル、がんになったとき、ガンになる前どうでしたでしょうか。まず睡眠時間はどうでしたか。今の時代、寝る時間はほとんどの方が11時とか1時とかいう時間になっていると思います。先ほどの免疫力がいちばん働く時間というのは、夜の10時から2時ぐらいまでだといわれています。

そして、その2時から免疫が働いて、外から入ってきた異物、ウイルス等を攻撃してやっつけて、その後2時から4時ぐらいまでで傷ついた細胞の修復をしたり、解毒をしたりという作業が行われ、その後、朝6時ぐらいから排泄が始まる。それが人間の体のバイオリズムなのです。

それを夜12時、1時まで起きていたら、人間の体のなかではどうでしょう。この免疫が働く時間に起きていたら免疫が働けません。寝ているから免疫が働く。そういう状況に自分でしてしまっている。がんが増殖する条件を増やしてしまっている。

また今頭寒足熱ということがよくいわれていますが、血流が悪くなるのもライフスタイルが大きな原因なのです。例えば冷房、暖房といったものはどうですか。人間の体というのは重力の上に立っているわけだから、血液は基本的には下に、下にとおりていきます。下から上に上がることはなかなか難しいのです。そして、温かい血流は全部上に行ってしまう。

そうすると、人間の体というのは、例えば冷房をしていると、冷房というのは冷たいから、どんどん下に行きます。冷たいのが下に行って、足が冷えてしまい、上はどんどん温かくなる。暖房も同じことです。温かいのが上に来るので、温かいのはどんどん上へ行って、足が冷える。下半身が冷えると血流はどんどん悪くなるし、人間の血液というのは下から上に、要は重力にさからって上がることもなかなかできません。そうすると血流がどんどん下に滞って、体の血流が悪くなってしまうのです。

昔はどうだったかというと、昔は冬はこたつとか、足を温めます。そして上は冷たい。頭寒足熱。夏は扇風機、上を冷やして、下は暖かい。そういう状況でいい循環ができていたのを、今のライフスタイルはどんどんそういったものを壊してしまう。なおかつ血流が悪くなる大きな原因は、歩かない、動かない、筋肉を使わない。血流をいちばん下半身から上半身に持っていくのは足の筋肉です。足の筋肉もどんどん衰えてしまう。そして、手などの筋肉を使わなくなってしまうことによって血流がどんどん悪くなってしまうわけです。それによって人間の体の循環がどんどん欠落して病気になる大きな原因になってしまうということです。

がんと食事

そして食事です。「がん育成三高食」というのを聞いたことがありますか。高タンパク、高カロリー、高脂質です。なぜかというと、例えば高カロリー、これはブドウ糖、砂糖です。今は砂糖のあるものばかり食べている。がん細胞のえさというのはブドウ糖なのです。PET検査というのがありますが、あれはがん細胞がエネルギーを横取り、略奪をしていくという性質を使って、血液のなかにブドウ糖を入れて、そこに放射線を当てると光るという作用を用いて、点滴を打って一定の時間たって光を当てると、体に点滴で入れたブドウ糖はがんのところへ全部集まって光る。それだけがん細胞というのはカロリーを必要とするわけです。

この前テレビでやっていましたが、がんは新生血管というのは出して自分でつくって、エネルギーをどんどん横取りをしていく。がんになるとどうでしょう。どんどん正常細胞のエネルギーをがん細胞がとって、どれだけ食べてもどんどんやせていってしまいます。

どんな状態でしょう。われわれが病気になったときに、そしてまだまだ食事とかで甘いものばかり食べていた。それは例えばサル山のサル。元気のいい雄ザルと、子ザル、雌ザル、お年寄りのサルがいた。がん細胞というのは元気なサルです。そこにえさをぱんとあげると、全部そっちの元気のいいサルがとっていきます。子どものサルとか年を取ったサルは、下に落ちたこぼれたものをつまみ食いするぐらいしかできない。そんなようにがんに餌を与えてあげてしまっている。毎日1000個、2000個できているがん細胞に一生懸命餌を与えて成長させてしまうというようなことが起こっているわけです。

そして、高タンパク、高脂質。高脂質というのは血液どろどろ。高タンパクというのは脂っぽいものを食べることによって、人間は動物性のタンパク質を食べることによって、そのタンパク質を解毒排泄するのに相当なエネルギーがいります。いったん体のなかに入ったタンパク質をアミノ酸というものに分解しなければいけない。例えば真珠のネックレスがあります。これがタンパク質だとすると、それを人間の体のタンパク質にするには、そのネックレスをばらばらにして、もう一回組み立てるという作業が必要なのですね。そこで非常に人間の肝臓とか腎臓に負担になるアンモニアとかいう有害物質が出るので、それが肝臓だとか腎臓という肝心要の臓器を弱らせて血液が汚れるきっかけになってしまう。そんなことが体のなかに起こっているわけです。

そういう状態になったら、人間の免疫が自分のなかにリンパ球という免疫細胞があります。この免疫細胞ががんのところに行こうとしたときに、どうでしょう。血液の流れが悪いどろどろの血液であれば、行きたいところにも行けない。交通渋滞のなかを消防車が走っているようなもので、火事は燃え広がってしまいます。

こんな状態に食べ物によってなってしまっているわけです。それが1000個、2000個の毎日できているがん細胞が増えていってしまう大きな原因になるのだということです。

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